「色づく世界の明日から」みんなの感想評価とネタバレ考察
感動
単刀直入に本作の感想をまとめると感動です。正直なところ、序盤はさほど惹かれるものはありませんでした。それと言うのも、主人公のひとみを好きになれなかったからです。
故意ではなかったとは言え、ゆいとの家に現れた際にしっかり弁明できなかったり、それ以外でも自分の気持ちを押し殺してしまったり、見ていて腹立たしくなることなんて珍しくもなんともなかったです。
しかしながら、終盤からは見違えるほどに自分の気持ちを真っ直ぐに届けようと、曲がりなりにも努力している姿が見られるようになり、いつしかそんなひとみを心から応援したくなっていた次第です。
そして、お別れのシーンはまさしく青春群像劇ならではの感動が詰まっていました。作画の美しさも相まって記憶に焼き付いたのは言うまでもないです。
時空を駆ける超絶作画アニメ
物語としては過去へタイムトラベルをするSFものですが、舞台が現代の長崎なので、作品全体にリアリティがあり没頭できます。
主人公は視覚に問題があり、世界がすべて白黒に見えるという設定ですが、その分主人公の世界が色づいていく瞬間には深い感動を覚えました。
白黒の世界がカラフルになっていくシーンでは、クレヨンや絵の具のようなアナログ画材の質感が強調されていて、彼女が感銘を受けた作品の雰囲気や感動が伝わってきて良かったです。
キャラクターデザインは今をときめくイラストレーターのフライさんで、主要キャラクターたちのみずみずしい髪や瞳が非常に印象的でした。
過去で仲良くなった仲間たちとわかれ、主人公が未来に帰るという終わり方はかなり寂しいものがありましたが、完全なハッピーエンドでは終わらないというところが妙に現実感があって面白いと思いました。
灰色の世界が色鮮やかに映るまでに
魔法が存在する世界での長崎を舞台に高校生の青春を描いた日常作品となっています。主人公の月白瞳美は、祖母の琥珀の魔法で60年前の2018年にタイムスリップしてやってきます。魔法使いの家系ながら魔法が嫌いで控えめな性格です。
更に幼い頃に色が見えなくなり、すべて白黒でしかものを認識できない状態でした。そんな瞳美が琥珀の家族と過ごしたり、高校生活での様々な出会いによって、彼女の内面が変わっていく様子を感じることができるのが、この作品の見所です。
特に本来なら祖母と孫である瞳美と琥珀の関係はなかなか面白い設定でしょう。正反対の性格ながら、一緒に暮らしていくうちに親友のような関係になるのは新鮮で魅力ある内容でした。
また、タイムスリップした瞳美と最初に出会った唯翔との恋愛模様もこの作品の重要な要素で、彼女が色を取り戻す切っ掛けになります。この2人のもどかしくも切ない関係がより物語を奥深くしたと言えるでしょう。
全体的に素晴らしい描写と淡い青春ストーリーが見事にマッチし、色鮮やかな世界をうまく表現していました。瞳美だけでなく登場人物達の成長も感じられ、満足のいく作品となっています。
優しい作画と静かな成長物語
「花咲くいろは」や「SHIROBAKO」を担当した制作会社P.A.WORKSが描く美しい絵が物語に引き込みます。主人公の瞳美が色が見えていない時とパッと見えるようになった時の対比がすごくて、いきなり世界が輝いたように見えます。
キャラクターは1人1人悩みもあって、等身大の高校生という感じで共感できると思います。少し物語が単調に感じるところもありましたが、瞳美の感性が最初は少し鈍く変化は少しずつなので、それに合わせていたのだと思いました。
私は終わり方もとても好きでした。結局時の流れは越えられないので、別れは訪れるのですが、しっかりお別れすることで、それまでの日々の描写がさらに輝いてみえました。
瞳美と葵唯のつながりが絵本に隠されていたことが、ラストで分かって救いになったし、とてもいいつながりだったなと思います。