哀れなるものたち

哀れなるものたち
(C) 20th Century Studios
4.0
5つ星のうち4.0 (合計3レビュー)
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「哀れなるものたち」みんなの感想評価!面白い?つまらない?

ビジュアルとエマの演技に圧倒される2時間半

2024年3月8日

自死したものの幼児の脳を持たされて生き返った成人女性が、男性の抑圧から解放されていき、自我を確立させ人生を取り戻していく物語ですが、映画としてのビジュアルや音楽、衣装にインテリアの細部に至るまで、変質的なほどにビジュアルにこだわった作品で、その印象がとても五感に響きました。

カラフルな空、極端な曲線を描く建造物、ふくらみの大きなパフスリーブ、どこかゆがんだそれらが、ゆがんだ起点を持つ物語と逆に調和していて、その異質さにとにかく酔わされつづけた感覚を受けました。

そして物語最初は、ガニ股で歩き幼児性を体現していた女性が、性を取り戻し存分に、その愉しみに耽溺していく大人へと変貌していく、エマストーンの演技がひたすらにパワフルでした。ただ裸を見せつけているのではなく、その中にある魂すらも映画に売っているかのような迫力は、空恐ろしいほどでした。

アクが強くて万人向けではない映画ですが、一度酔わされたならその感覚が、しばらく抜けない、タチの悪い、けれど最高な味の酒のような作品でした。

htm

凝りに凝った映像美とエマストーンの演技に耽溺する映画

2024年2月16日

胎児の脳を移植された成人女性の成長物語、というあらすじからして異常さを感じたのですが、実際にはその設定すら、この映画世界のとっかかりのひとつに過ぎませんでした。なにもかもが歪んでいていびつで、だからこそ映画そのものの世界観としては統一感されているように感じられる、そんな相当に変わったこだわりのある映画でした。

話運びとしては、この女性が男性の思うがままに行動していたのが、やがて知性を得て欲求を得て未来への希望を持ち、そして男性の楔を引きちぎっていく、成長物語として描かれています。女性の解放を描く、というテーマはとてもストレートなものです。

ただそれを描くために、衣装ひとつひとつ、舞台となる部屋や船、娼館といったセット、空に至るまでこだわりきったセンスの塊で表現されているのが斬新かつユニークでした。

そして、まさに身体を張ったエマストーンの演技には圧倒されました。幼児のようなガニ股歩きから、思春期の少女のような突っ張った物言い、そして知性を得た抑えた振る舞いへと変化していくさまを見事に演じていました。度重なる性描写には多少圧倒されすぎて、そこまで必要だったかは、ちょっとわからないと思えました。

人を相当選ぶコアな作品だと思うのですが、ハマればこんなに酔わされる作品もない、と思いました。

htm

感動の奥深さに触れる

2024年2月11日

ヨルゴス・ランティモス監督の最新作『哀れなるものたち』を観て、心からの感動を覚えました。エマ・ストーンの演じるベラとマーク・ラファロの演じる遊び人弁護士の物語は、一言で言い表すことができないほどの深みがあります。

特にベラの成長過程を追うことで、人としての成長の美しさ、苦悩、そして葛藤が見事に描かれていました。映画の色彩の使い方にも注目し、物語の展開と共に変わる色使いは、視覚的にも感情的にも大きな影響を与えました。

ベラが新たな生を受け、知性と感情を育んでいく過程は、まさに「人間とは何か」という問いを投げかけるかのよう。その中で、社会の矛盾や人間性の深淵に触れることができます。

特に印象深かったのは、エマ・ストーンの熱演です。彼女の演技力はこの作品でまた一つ頂点を極めたと言えるでしょう。彼女が演じるベラの心情の変化、成長する姿は、観る者の心を強く打ちます。

また、物語の中で織りなされる人間関係、特にゴッドウィン医師との関係性は、複雑でありながらも深い愛情を感じさせるものでした。

この映画は、ただのエンターテインメント作品としてではなく、人間としての深い洞察を促す作品です。私自身、映画を観終わった後、長い時間をかけて自分自身と向き合うことになりました。

生きること、人として成長することの意味を改めて考えさせられたのです。『哀れなるものたち』は、ただの映画を超えた、人生を考えるきっかけを与えてくれる作品でした。

エログロな表現を超えたその深いメッセージに、心から感謝しています。誰もが一度は観るべき、心に残る作品です。

映画好き

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「哀れなるものたち」の作品情報

基本情報

タイトル 哀れなるものたち
読み方 あわれなるものたち
原作 アラスター・グレイ
製作総指揮 オリー・マッデン
ダニエル・バトセック
上映日 2024年1月26日
上映時間 141分
配給 ウォルト・ディズニー・ジャパン

作品概要・あらすじ内容

『哀れなるものたち』は、ヨルゴス・ランティモス監督による独特な世界観を持つSFロマンティック・コメディです。この映画はイギリス、アメリカ、アイルランドの合作で、エマ・ストーン、マーク・ラファロ、ウィレム・デフォーなどの豪華キャストが出演しています。

物語の中心は、天才外科医によって蘇生された若い女性ベラ・バクスターの成長と冒険です。彼女は自らの知性と性の覚醒を通じて、外の世界を探求します。

映画の舞台はヴィクトリア朝のイギリス。不幸な女性が自ら命を絶とうとした後、外科医バクスターによって蘇生されます。この外科医は彼女に胎児の脳を移植し、新たな人生を与えるのです。

ベラはその後、医学生のマックスに愛され、婚約しますが、彼女の純真な美しさに惹かれたプレイボーイの弁護士ダンカンと駆け落ちしてしまいます。ベラの物語は、彼女が知と性を探求する旅へと展開します。

この映画は、アラスター・グレイの同名小説を基にしており、ランティモス監督の長年の夢であったプロジェクトです。監督はこの物語を映画化するために、何年もの時間をかけてプロジェクトを実現させました。

映画の評価は、その美しさ、ひねくれたユーモア、時にグロテスクなまでの印象的なシーンで高く評価されています。『エマニュエル夫人』と『フランケンシュタイン』、あるいはスチームパンクなビジュアルが特徴の『昼顔』を彷彿とさせる作品とも評されています。

物語の中でベラは、自分自身のアイデンティティと自由を求めて旅をします。彼女の旅は、知的な成長と性的な覚醒を通じて、自分自身と外の世界の両方を発見する過程を描いています。この映画は、恋愛だけでなく、人間性、自由、知識の探求といったテーマを掘り下げています。

『哀れなるものたち』は、ユニークな視点で物語を展開させるランティモス監督の手腕が光る作品であり、その独創性と演技力で観る者を魅了します。

PV予告動画